最近、みなさんのお勤めの会社で、「パーパス」や「パーパス経営」という言葉をよく聞きませんか?
少し前までは、ESG経営や、SDGsとか、アルファベットが並んだ経営目的や手法が語られていましたが、今度は、「Purpose」?
僕が初め「赤ちゃんのオムツ?」としか聞こえませんでした。
さて、パーパス(Purpose)とは、一般的に「目的」「意図」と訳されますが、ビジネスシーンでは「何のためにこの会社があるのか」という、組織や企業の「存在意義」を意味します。
その核心は「WHY」、すなわち「なぜそれをやっているのか」というシンプルな本質であり、事業の原点・根拠になる部分だと言えるでしょう。
2年ほど前から盛んに唱えられてきたこの言葉。日本企業においては、とても定着が難しいと思います。なぜかというと、日本企業のサラリーマンの多くは、会社に勤めることを=「ライスワーク」(食うための仕事)と考えている側面があるから。
もちろん、自分が一生かけて目的を達成するという「ライフワーク」として捉えている人も沢山いらっしゃいますし、「ライスワーク」自体を否定するつもりは全くありません。
経営層は、「何のためにこの会社があるのか」を、ミッション・ビジョンと共に、株主や社員に唱え、その存在意義を語ります。
社員ももちろん自社の存在意義は十分わかっていますが、日本企業の特徴は、社員の評価は「減点方式」であり、プラスの業績をあげるよりも、マイナスとなる失敗をしないこと。そして、上手く責任を回避できる人が出世したりします。
これら、会社の裏側や現実を描いた、超面白い本をご紹介します。
松岡圭祐著
「ミッキーマウスの憂鬱」
この本は、東京ディズニーランドの舞台裏を描いた問題作。2005年発行で、この本、フィクションですが、今だったら絶対書けない内容だと思います。
映画化も絶対無理でしょうね。だって、夢の国で絶対触れてはいけない秘密が。。(これ以上はやめときます。ヤバい、汗)
内容としては、東京ディズニーランドの準社員(派遣社員)になった21歳の若者の物語です。
当初は、ジャングルクルーズのクルーになりたくて入社試験を受け採用されたものの、派遣されたのはバックステージ(裏方)の雑用。
初めは夢と現実のギャップに絶望するも、様々な出来事を通じ、やがて裏方の意義や誇りに目覚めていきます。
秘密のベールに包まれた巨大テーマパークのバックステージで働く人々の3日間が描かれる青春物語。
バックステージでは初日からトラブル続き。裏方の仕事はできて当たり前。働いても評価されず、失敗すると非難される。それでも前向きに頑張る準社員が大きなトラブルに巻き込まれます。ディズニーにとって、命ともいえるあのキャラクターに異変が!!
そのトラブルは、本来はシステムの不備によって生じたもの。しかし、本部の正社員は自らの保身のため、全てバックステージの準社員に罪をおわせ、若者たちを追い詰めます。
そんなトラブルに関係なく、パークは「夢の国」として毎日運営しないといけません。バックステージの準社員は、「ゲストの夢を守る」ため誰もが全力を尽くします。
一方、本部の連中は、その裏方の人間の無邪気な夢物語への忠誠心を利用して、安い時給でこき使います。
裏方を単なる盤上の駒としてしか見ておらず、「金儲けのシステム」をしっかり回すための規律を重んじ、規律に違反した裏方を処分しようとします。
最後は、準社員の命を掛けた活躍で、痛快大どんでん返しが起こって。。。
続きはぜひ本で。
ここで、日本企業のパーパス経営の難しさが読み取れます。
今回でいうと、バックステージの準社員は「ゲストの夢を守る」ため、失敗は許されません。
そして、本部の正社員は、失敗させないための規律を重んじ、規律に反したものを裁こうとします。そう、自分の保身の為に。
たとえ、非常事態において「夢の国を守るため」に正しいことであっても、規律に反したものは罰せられる。
ここに、日本の会社の減点主義が影を落としています。
経営層が唱える「何のためにこの会社があるのか」と、社員における「何のために自分たちは働くのか」のベクトルを一致させるためには、過度なこの減点主義を見直し、失敗を成長の元として評価する文化と、社員の心理的安全性の担保が、これからのパーパス経営においてはマストだと思います。
経営の思いと、現場の思いを一致させるために、過度な中間管理は不要。
お客様にもこのパーパスを十分理解いただき、その理念にあった軽度なミスは許容頂く寛容さが必要。
そう感じた「ミッキーマウスの憂鬱」
という本でした。
いやー、本って本当に面白いですね。
では!